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身体の表面にある角質層は、古くなると下からの新しい細胞に入れ替わるため、垢となってはがれ落ちることになります。この皮膚の新陳代謝により、新しい角質層が常に同じ厚さと形を保つことができます。
水虫に感染した人が靴下を脱ぐ際に、多数の垢が空気中に拡散しますが、この垢には白癬菌が含まれているため、その人が歩いたりスリッパを履いたりすることにより、垢とともに白癬菌もあたり一面に撒き散らされることになります。つまり、水虫の人が生活している範囲には、高い確率で白癬菌が存在していることになります。
白癬菌は垢の中にも潜んでいますが、多くの場合はそのまま床の上や空気中に存在しています。このように乾燥した床の上などの外気にさらされる状況では、白癬菌は長時間生存することはできません。しかし、垢の中で十分な栄養と湿気がある環境においては、そのままの状態でも数ヶ月、長い場合は1年以上も生存しつづけます。
つまり、水虫に感染した人の垢が落ちている限り、他の人の足に付着して感染する可能性はかなり高いということになります。このことからも、家族の中に水虫の感染者がいる場合は、こまめに掃除を行い、垢とともに水虫菌を取り除くことが重要なのです。
白癬菌は、カビの一種のため、高温多湿な環境をより好みます。ある研究によると、温度が35度の状況においては、湿度が85%以下の場合、白癬菌は皮膚に付着しても角質層には入り込めませんでしたが、湿度を100%に上げると1日で進入してきたということです。また、湿度が100%の状況では、15度程度の低温であっても3~4日あれば白癬菌は角質層まで侵入してきます。つまり、水虫の感染には、温度よりも湿度のほうがより影響が大きいことが分かります。

人間の足の指の間の湿度を測ってみると、素足の場合は80%程度ですが、しばらく靴を履いていると、100%近くまで上昇します。これは、1日にかく汗の量は、足だけで200mlにものぼるためです。特に梅雨などの湿度の高い季節では、靴の中は常に100%の湿度となり、温度の上昇と相まって白癬菌の成長が活発になります。つまり、靴の中という環境は、高温多湿を好む白癬菌にとっては非常に棲みやすい環境であるといえるわけです。
日本人が水虫に感染しやすくなったのは、文明開化により欧米文化である靴が輸入されるようになった明治時代からであるといわれています。特に、軍隊においては常に軍靴を履いて戦場を走り回るため、水虫が流行し、その家族にも次々と感染していったと考えられています。
昭和になり、ファッションが急速に西洋化して誰もが靴を履くことが当たり前になったあたりから、水虫の患者数は激増し、現代では5人に1人という驚異的な数字にまで膨れ上がってきたのです。
皮膚科における水虫患者数は、5、6、7月に急激に増加しますが、夏が終わるとともに減少をはじめて、冬にはぐっと少なくなります。これは、白癬菌は高温多湿の環境においては活発に活動しますが、寒くて乾いた環境では活動が衰えるためです。
▼足の水虫患者数(月別)
| 月 | 水虫患者数 |
|---|---|
| 1月 | 202人 |
| 2月 | 210人 |
| 3月 | 289人 |
| 4月 | 346人 |
| 5月 | 472人 |
| 6月 | 665人 |
| 7月 | 720人 |
| 8月 | 597人 |
| 9月 | 381人 |
| 10月 | 294人 |
| 11月 | 289人 |
| 12月 | 213人 |
水虫の感染者にとっては、夏にはひどかったかゆみも冬になるとおさまるため、水虫のことはすっかりと忘れてしまいます。しかし、そうやって安心していると、4月、5月で気温が上昇してきた際に水虫は活動を再開し、再びかゆみが襲ってきます。
白癬菌は冬になるとその活動が鈍くなります。つまり、冬は炎症も起こりにくく、かゆみもなくなるため、はためには水虫が治ったようにみえます。しかし、白癬菌は温度が低くても死ぬことはなく、皮膚の角質層に潜んで生き残り、再び温かくなるのを待っています。
例えば、白癬菌を培養用の容器に入れて冷蔵庫に入れたとしても、カビは生えてきませんが、死んでいるわけではありません。その容器を冷蔵庫から出して適温に戻すと、途端に発育を始めます。白癬菌は低音においては冬眠しているといってもよいでしょう。つまり、活動の鈍っている冬の間にしっかりと治療をすることで、効率的に白癬菌を退治することができるというわけです。